紫外線と日光
紫外線(ultra violet=UV)について
化粧品をはじめとしたUVと名の付く商品が年中売れています。紫外線は強弱あるものの一年を通して降り注いでいます。紫外線って夏以外でも怖いのでしょうか。逆にPUVA療法はアトピーにとって有効なのでしょうか。何かと話題にのぼり怖がられている紫外線。
オーストラリアでは皮膚ガンの発生が特異的に多く発生していて、白人だから…という説が多いようですが、日本人だから大丈夫ということもいえません。また紫外線は現時点では気にしなくても良いとは考えていません。オゾン層の破壊は急激で紫外線が弱まることなく地上に降り注ぐことになって将来、何が起こるのかは未知数です。
紫外線には3タイプあります
紫外線には3タイプあります。紫外線は波長が390ナノメーター(100万分の1ミリ)からX線に近い領域に至る電磁波です。X線より短くなると放射能に至りますが、このような波長の短い電磁波は当然のこととして皮膚の表層は突き抜けて深層に作用します。一般的に波長が短くなるほど肉体的な破壊力が増しますが到達距離に限度があります。なお紫外線はUVで表記される場合が多く、これはUltra Violetを略したもので波長の長い方からABC順に記号がついています。
紫外線と皮ふガン
健康線と呼ばれ北欧では重宝されているUVBもいっぽうでは大変危険な紫外線で皮膚表面の角質層を通過して悪影響を与えます。短時間急激な曝露でも火傷を起こします。日焼は火傷の一種で長時間の曝露やまた習慣的に日光に曝す漁師さんなどには日光性角化症が職業病となっています。
紫外線(UVC、UVB)による発ガンは「有棘細胞ガン」や「メラノーマ(悪性黒色腫)」であり、とくにメラノーマは厚みが1.5ミリを越えれば全身に転移するという恐ろしいガンといわれています。皮ふガンの怖いところは、見た目は小さくても垂直方向への破壊力が大きいとされています。
紫外線とうまく付き合うには
紫外線の恐怖ばかりが強調されていますが、日光に肌を曝すことで皮膚が強化されるという医師もいます。日焼のあとは皮膚の角質が厚くなって防御機能が強化され、これがアトピーには好都合なのだそうです。厚くなった分、水分の透過率が小さくなって保湿機能が保たれるからと推測できます。そう云えばいちばん角質層の厚い踵にはアトピーが出ることはないようです。いずれにしても急激に日光に肌を曝すことは良くありません。海水浴の際は水着の上にシャツを着るのが無難です。また日光浴を効果的にするには、春の三月ぐらいから計画的に少しずつ肌を日光に曝し、また夏なら紫外線の比較的弱い朝の10時頃までとするなどの工夫が肝要です。
- 紫外線が強い季節は4月から10月まで、なかでも6月がピークです。
- 強い時間帯は10時から15時あたりまで。
- 12月から2月までは夏の半分程度に照射量は少なくなります。
- UV化粧品には優れた紫外線防御因子のサンスクリーン効果はありますが過信は禁物。
- サンスクリーンクリームだけでは紫外線カットは不充分です。
- 外出の際はツバの広い帽子をかぶり、長袖で肌の露出をすくなくしてください。
- 繊維の質、太さ、染料などの組み合わせによって遮蔽率が違います。
- 紫外線よけに黒いモノが流行ってますが、黒色は染色安定剤を多く含んでいます。
- 酸化チタンを使ったもので白い物も市販されていて遮蔽効率はいいようです。
- なおアトピーの方が海水浴をされる場合、事前に医師に相談されることをお奨めします。
紫外線の効用
紫外線の恐怖ばかりが強調されていますが、日光に肌を曝すことで皮膚が強化されるという医師もいます。日焼のあとは皮膚の角質が厚くなって防御機能が強化され、これがお肌の弱い方には好都合なのだそうです。厚くなった分、水分の透過率が小さくなって保湿機能が保たれるからと推測できます。またビタミンDの体内合成に日光が欠かせないとされ、紫外線を含めて日光にさらされる時間が極端に少ない北欧の人々は人工太陽の照射を受けたり、わざわざ日光浴をするために地中海沿岸に出かけるということのようです。
日光による皮膚障害
日光には、体内でのビタミンDの生産を促し一部の慢性の皮膚病(乾癬など)の抑制に役立つ効用があります。しかし、様々な皮膚障害も引き起こします。痛みを伴う日焼けだけでなく、しわなど老化に伴う皮膚の変化(光老化)、日光角化症、皮膚がん、さらにはアレルギー反 応や一部の皮膚疾患の悪化などもあります(光線過敏反応)。
光老化
長期的に日光にさらされることで皮膚の老化が早まります。紫外線にさらされた皮膚には細かいしわや粗いしわ、不規則な色素沈着、黒子(こくし)と呼ばれる大きなそばかすに似た斑点、黄ばみ、皮革様のゴワゴワした質感などが生じます。
日光角化症
皮膚が長い年月に渡り日光にさらされたことが原因で起こる前がん性の腫瘍。通常はピンク色か赤色で、うろこ状のかさつき(鱗屑)を伴う不規則な形として生じます。 明るい灰色や褐色になり、触れると硬くデコボコが感じられたり、ザラザラした感じになることもあります。
皮膚がん
日光を浴びることが多ければ多いほど、有棘細胞がん、基底細胞がん、悪性黒色腫などが発生するリスクが高まります。
光線過敏症
日光アレルギーとも呼ばれ、日光によって引き起こされる免疫系の反応で、日光じんま疹や多形日光疹(たけいにっこうしん)、化学物質による光感作などがあり、通常は日光にさらされた部分の皮膚に痒みを伴う発疹が現れるのが特徴です。また、化学物質による光線過敏症には「光毒性」と「光アレルギー性」の2種類があります。
日光じんま疹
日光にさらされてわずか数分で現れるじんま疹(大きくて赤く、痒みを伴う隆起やみみず腫れ)のこと。
典型的には数分から数時間で消失しますが、非常に長期間、ときにはずっと日光じんま疹が生じやすくなる場合もあります。このじんま疹が広範囲にできると、頭痛、喘鳴、めまい、脱力、吐き気などを伴うことがあります。
多形日光疹
日光(主に紫外線A波)に対する反応として生じますが、その原因は十分に解明されていません。これは日光に関連する皮膚の問題として最も一般的なもののひとつで、女性や北方の気候の出身で、あまり日に当たる機会のない人によく見られます。
日光にさらされた部分の皮膚に複数の赤い隆起や不規則な形の赤く盛り上がった病変として生じ、稀に水疱も見られます。痒みを伴い、典型的には日光に当たってから30分から数時間で出現します。
しかし、何時間も後または数日後に新たな発疹が現れることもあります。発疹は数日から数週間以内に消えるのが通常です。
化学物質による光線過敏症
日光には、体内でのビタミンDの生産を促し一部の慢性の皮膚病(乾癬など)の抑制に役立つ効用があります。しかし、様々な皮膚障害も引き起こします。痛みを伴う日焼けだけでなく、しわなど老化に伴う皮膚の変化(光老化)、日光角化症、皮膚がん、さらにはアレルギー反 応や一部の皮膚疾患の悪化などもあります(光線過敏反応)。
日光による皮膚障害
光毒性
日光に短時間さらされた部分の皮膚に痛みが生じ、発赤と炎症が起きるほか、ときに皮膚が褐色または青灰色に変色することがあります。日焼けと似ていますが、特定の薬剤や化合物を服用するか、皮膚に塗った後、(香水など)日光に当たった場合にしか現れません。一部の植物(ライム、セロリ、パセリなど)には、 一部の人の皮膚を紫外線の作用を敏感にするフロクマリンと呼ばれる化合物が含まれています。この反応を植物性光皮膚炎と言います。
光アレルギー性
アレルギー反応によって、発赤、鱗屑(うろこ状のくず)、痒みが生じるほか、ときにじんま疹に似た水疱や斑点が現れます。反応の原因は、アフターシェーブローション、日焼け止め、薬剤などがあります。
光アレルギーは、その物質にさらされ、かつ日光を浴びた後にのみアレルギー反応を起こします。また、日光にさらされていない部分の皮膚にも発生します。通常は日光に当たってから24〜72時間に発生します。
眼に対する影響
紫外線の波長の大半は角膜で吸収されますが、角膜を通過した紫外線のほとんどはレンズの役割を担う水晶体で吸収されます。残りの1〜2%が水晶体を通過して網膜まで到達します。紫外線曝露による眼への影響は、急性の紫外線角膜炎と慢性の翼状片、白内障が知られています。
紫外線角膜炎
強い紫外線に曝露した時に見られる急性の角膜炎症で、結膜(白目)の充血、異物感、流涙が見られ、ひどくなると強い眼痛を生じます。雪面など、特に紫外線の反射が強い場所で起きる「雪目(ゆきめ)」が有名です。昼間に紫外線に曝露した場合、夜から深夜あるいは翌朝にかけて発症し、大部分は24〜48時間で自然治癒します。
翼状片(よくじょうへん)
眼球結膜(白目)が翼状に角膜(黒目)に侵入する線維性の増殖組織で、瞳孔近くまで進展すると視力障害をきたします。通常は30歳代以降に発症し、進行は早くありません。農業、漁業従事者など戸外での活動時間が長い人に多発し、紫外線曝露を含めた外的刺激がその発症に関係すると考えられています。
白内障
眼科疾患の中で最も多い病気のひとつで、水晶体が濁るために網膜まで光が届かなくなり、見え方の質が低下してきます。白内障は80以上のタイプがあると言われていますが、日本人で最も多く見られる皮質白内障というタイプでは、紫外線との関係が知られています。
紫外線療法
紫外線療法は、適切な外用療法などを行っても軽快しない例や他の治療法で副作用を生じている例に考慮される治療法に位置づけられる。
紫外線療法
紫外線療法は、適切な外用療法などを行っても軽快しない例や他の治療法で副作用を生じている例に考慮される治療法に位置づけられる。
アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法としては、波長340〜400nmのUVA1と311nmをピークとするナローバンドUVB療法の有効性を示す報告が多いが、今のところアトピー性皮膚炎患者を対象にした紫外線療法について確立したプロトコールやガイドラインはない。
現時点で紫外線療法を行う場合には、まずその適応を十分に考慮したうえで、作用機序や照射量、急性皮膚障害や皮膚がんを含む長期の副作用などを十分に理解している紫外線療法に習熟した医師により慎重に行われる必要がある。
なお、小児に対する長期の安全性に関する情報は不十分であるため、乾癬では紫外線療法は10歳以上の小児に行ってよい治療とされており、10歳未満への小児には勧められていない。
難治状態のアトピー性皮膚炎には、紫外線療法を行ってもよい。
適切な外用療法やスキンケア、悪化因子対策で軽快しない例や他の治療で副作用を生じている中等症以上の難治状態のアトピー性皮膚炎には、紫外線療法を行ってもよい。
紫外線には皮膚の免疫に関係する細胞の働きを抑制する作用があり、アトピー性皮膚炎を軽快させる効果が期待できる。
アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法として、波長340〜400 nmのUVA1と波長311nmをピークとするナローバンドUVBの有用性が数多く報告されており、本邦ではナローバンドUVBがより広く用いられている。
UVA1は急性増悪時に、ナローバンドUVB は慢性期により有効とする意見があるものの、確立した選択基準や照射プロトコールはない。長期にわたるPUVA療法は皮膚発がんのリスクを上昇させるが、ナローバンドUVB療法は、そのリスクを有意には上昇させないとの報告がある。
しかし、ナローバンドUVB 療法でも小児に対する長期の安全性に関する情報は不十分である。また、免疫抑制薬との併用や皮膚がんの既往あるいは、そのハイリスク因子、光線過敏症がある患者には避けた方がよい。
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024より
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/ADGL2024.pdf
アトピー性皮膚炎と紫外線療法
紫外線を用いたものとして、PUVA療法、ブロードバンドUVB療法、ナローバンドUVB療法、ターゲット照射型エキシマライト、エキシマレーザー、UVA-1療法があります。
PUVA(プーバ)療法
光感受性物質の皮膚への投与経路により、外用PUVA、内服PUVA、PUVAバス療法の3種類の方法があります。 PUVAバス療法が最も有用性が高いとされていますが、入浴設備が必要で患者一人に要する治療時間が長いという欠点もあり、大学病院を除いて広く普及するには至っていません。
■ブロードバンドUVB療法
PUVA療法は、紫外線の波長の長いA波を照射する療法で、ソラレンという液体の入ったお風呂に浸かって紫外線を吸収する成分を体に染み込ませたり、体に直接塗ったりした後、専用の紫外線照射装置に入り紫外線を浴びます。一方、ブロードバンドUVB療法は、波長の短いB波の290〜320oを照射する療法で、一般診療ではしばしば使用されています。
ナローバンドUVB療法
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)に治療効果が高く、かつ最小紅斑量が高いUVBの波長領域が313nmであるというエビデンスから、311±2nmの蛍光管が開発され、光線照射用の機器が商品化されて世界的に広まった治療法です。尋常性乾癬、尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)に特に有効とされていますが、円形脱毛症、アトピー性皮膚炎に対しても効果が期待できます。治療法も、照射するのみと簡便で治療時間も短く、色素沈着や発がんリスクも低いとされています。現在ではPUVA療法にかわる光線療法のファーストラインとして、皮膚科領域ではクリニックを含めて広く普及するようになっているようです。
エキシマライト
ナローバンドUVB療法と同様、尋常性乾癬に対する有効性が高く、紅斑が生じにくい波長(308nm)を、限局した皮膚病変に照射できる紫外線照射装置で、尋常性白斑、尋常性乾癬などの限局性難治性皮疹、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)に対する高い有効性が報告されています。膝や肘、手指などの難治性皮疹に対する効果が期待できます。
UVA-1療法
340〜400nm領域のUVAを用いる新しい治療法で、紅斑が生じにくく、アトピー性皮膚炎、全身性あるいは限局性の強皮症、皮膚リンパ腫への有用性も認められています。