日本アトピー協会は、アトピー性皮膚炎およびアレルギー諸疾患に対して、安心と安全、そして快適と向上を目指す人々の暖かい誠意に基づき組織された団体です。

HOME > アトピー患者の皆様へ > アトピーの治療 > 外用薬について

アトピーの治療

外用薬について

外用薬は塗り薬のことで、患部の症状によって医師はケースバイケースで外用薬を処方します。軟膏でなければいけない、クリームの方が効果的、あるいはこの部位にはスプレー剤が得意技を発揮する…など、医師は判断し選択します。それぞれ薬効が最大限に発揮できるよう薬剤設計されていますので医師の指示に従って使ってください。

症状に応じて医師は外用薬を使い分けます

外用薬というのは「塗りぐすり」は医学用語で、アトピー性皮膚炎には欠かすことのできない薬物療法のかなめです。ひと言に「塗りぐすり」といっても軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、貼付剤など症状や部位によって医師は使い分けします。とくにクリーム剤と軟膏剤の使い分けを十分に理解しておいてください。

知っておきたい皮膚科外用薬の知識

皆さんにとっておなじみの軟膏、クリームやローションなど…、これらは外用薬と称されています。とくに皮膚科では内服薬よりも外用薬がはるかに多く使われます。その種類と機能を勉強しましょう。

主剤と基剤

外用薬は主剤と基剤とで構成されています。主剤となるのはステロイド薬であったり抗ヒスタミン薬であったり、また抗真菌薬などです。いっぽう基剤は主剤を保持し、これらを効率よく経皮吸収させるためのもので、使用対象となる病変の程度や湿潤の有無、そのほかさまざまな要素に対応して多くの種類があります。

塗り方、使い方

外用薬の性質や使い分けなどをよく理解してください。また医師の指示も守らなければ効果は期待できません。医師は四六時中、患者さんに付きっ切りではありません。医師の目の届かないところでは患者さん自身が治そうという強い意志を持たなければなりません。コンプライアンスと難しく云われますが、要は決められた時間に、決められた量の薬をきちんと飲んだり塗ったりすること…これは医師との約束であって患者さんの「義務」でもある訳です。

一日に何回塗ればいい?

これを曖昧にしている医師は多いようです。「症状が酷くなったら塗ってください」といっても、どの程度が酷く、どの程度なら酷くないのか患者さんは判断できません。「これくらい…」という目分量も人によっては違います。現在塗る量の目安として、ワンフィンガーチップユニット(1 FTU=Finger Tip Unit)が基本的な使用量の目安とされています。チューブの場合、大人の指先の関節1つ分の長さを出した量(約0.5g、1 FTU)で大人の手2枚分の面積に塗るのが、使用量の目安とされています。またローション剤の場合は、1円玉サイズ(約0.5g)が相当します。塗る回数は、一日2回の外用薬が多いようですが、医師より1日3回の塗付を指導される場合もあります。朝は、食後あるいは通勤や通学前、そして午後の早い時間、最後は入浴後、という風に習慣づければ如何でしょうか。しかし塗るタイミングと間隔は大切ですのでかかりつけの医師の指導を必ず受けてください。

ステロイド外用薬の塗布回数

ステロイド外用薬は、患者さんの年齢、疾患や皮疹の種類・程度、皮疹 の部位・範囲に応じて適切なランクや剤形が選択されます。ステロイド外 用薬は必要十分な量を使用することが重要とされます。かかりつけ医ドクターからの外用指導が優先ですが、急性増悪期には、1日2回(朝・夕方は 入浴後)の塗布回数が基本とされています。ステロイド外用薬のストロン グクラス以上では、3週間以降の治療効果は1日1回外用と2回外用で有意差はないとされていますので、症状が落ち着いたあとは1日1回の外 用でも良いようです。ただ、ミディアムクラス以下の場合は1日2回外用の方が1日1回より有効とされています。

保湿剤・ステロイド外用薬塗布量の目安(FTU)

皮膚がしっとりする程度の外用が必要で、目安として人先指の先端から 第1関節部まで口径5oのチューブから押し出された量(約0.5g)が、手 のひら2枚分の患部に塗る量とされています。

年齢・患部別の外用使用量(1FTU=0.5g)
小児 顔&頸部 上肢片側 下肢片側 体幹(背面) 体幹(背面)
3-6ヶ月 1 1 1.5 1 1.5
1-2歳 1.5 1.5 2 2 3
3-5歳 1.5 2 3 3 3.5
6-10歳 2 2.5 4.5 3.5 5
成人 2.5 4 8 7 7

※FTUは必要最低限の塗布量とも言われます。また、塗った部位が少し光るくらい。ティッシュを押し当て落ちない程度とも言われます。

どっちが先?保湿剤と外用薬

2度塗らなくてもよいように保湿剤と外用薬をミックスした混合薬を処方下さる病院やクリニックもありますね。結果から申し上げると、どちらを 先に塗っても効果にあまり差はないようです。
「ステロイド外用薬、保湿剤の順で塗るとステロイド外用薬を密閉できて効きやすい」「保湿を先にした方がステロイドの吸収がよくなる」「保湿剤は広い範囲に使うから、保湿剤、ステロイド外用薬の順番の方が塗りやすい」など様々な考えがあるようです。
ただ、アトピー性皮膚炎がある場合、乾燥肌であることが多く、患部以外にも保湿剤を塗るようにご指導があると思います。入浴後であれば皮膚に水分が多く含まれている状態なので、保湿剤を塗ることで、皮膚の乾燥をより防ぐことが期待出来そうです。浴室にバスタオルを持ち込んで、やさしく身体の水滴を抑えて「浴室内で保湿剤塗ってもいいよ」とドクターからお聞きしたこともあります。そして、お風呂を上がってから患部に外用薬という方法も。また2剤の役割は、炎症のある部位にはステロイド外用薬。乾燥している部位には保湿剤となります。

縦たて。横よこ。塗り?

指先に取ったお薬(保湿剤・外用薬)どのように塗ってますか?FTUを目安に出した量を、手のひら2枚分の面積数か所に分けて、ちょんちょんと置くように付けます。そして指ではなく手のひらで、ごしごし擦り込まず乗せるように、やさしく伸ばします。炎症のある部位は、吸収率が高いので擦り込む必要は無いようです。また、炎症部位は皮膚の凹凸も強いため被せるようにたっぷり塗るという感じでしょうか。そして、ヒトの皮膚には皮溝 (しわ)があります。ひじ・ひざの内側や手首、お腹周り、どこを見ても横にしわがあります。腕や足などはどうしても上下に塗りがちですが、出来るだけしわに合わせて横塗りを意識してみて下さい。赤ちゃんの場合も、手首や足首などのしわをしっかり広げて横塗りです。

いつまで塗るの? プロアクティブ療法

「見た目に良くなったから塗るの止めたら、ぶり返した」とお聞きすることもよくあります。そうなると「何時まで塗るの?」ってなりますね。悪くなったら塗る方法をリアクティブ療法、良くなったように見えても塗る方法はプロアクティブ療法と言います。この療法は、再燃をよく繰り返す皮疹に対してステロイド外用薬やタクロリムス軟膏で、速やかに炎症を軽減し寛解導入した後に、保湿剤とステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を定期的に(週2回など漸減しながら)塗布し寛解状態を維持します。炎症が軽快して一見正常に見える皮膚にも炎症細胞が残っており炎症の再燃を予防する療法です。 ただし、プロアクティブ療法への移行は、皮膚炎が十分に改善した状態で行われることが重要で、個々の症例において皮膚症状、経過、検査値などから総合的にドクターの判断が必要となります。

血清TARC値で確認

アトピー性皮膚炎の診断や病勢判定として、血清TARC値(保険適応の血液検査)というバイオマーカーが使用されています。アトピーでは症状の増悪を繰り返すため、治療効果や現在の症状の状態がどの程度なのか判りにくいため、TARC値によって、その時の病勢が客観的に数値で示されます。皮膚症状や経過、TARC値を含む検査値を診て、プロアクティブ 療法に移行していきます。

摺り込こまず、たっぷり塗る。

医師によって違いますが、過去にはよく摺り込むこととされていましたが、外用薬の性能も良くなったのでしょうか、現在は「外用薬を皮膚にちょんちょんと何箇所かに置き、すり込まないで乗せる≠謔、に、やさしく手のひらで広げます。」とされています。またベタベタ≠ノなるくらいが基本で、ティッシュペーパーを付けて落ちない程度というアドバイスもあります。患者さんはステロイド外用薬がともすれば「怖い薬」という怯えが一般的にあって「医師が指示した量」より少なめに使い、その結果、効果が十分に発揮されず「中途半端な治り方」となってダラダラとした症状が続きます。風邪薬が怖いから半分だけ飲んでも効果はあまり期待できません。「たっぷり目」を習慣つけてください。

消防車のたとえ

火事のときに現場の消防司令が「この火事なら消防車5台は必要だ」と判断して出動要請をしたのに2台でしか消火できなかったら火事は広がる一方です。同じことで医師が「このクラスのステロイド薬をこの量で一日何回…」と指導しても、患者さんがそれを守らなかったり、はじめから塗ることをしなかったら、炎症が広がるのは当たり前です。また、やようやく鎮火(炎症が治まる)しても、まだプスプスと燻っている状態で、風(何かのアレルゲン)などが吹くと、再び炎(炎症)がおこりますので、見た目に大丈夫でも自分で判断してはいけません。

基剤の種類

外用薬は大きく分けて次の6種類に分類されます。

軟膏剤(記号はO=オイントメント)
一般的な「塗りぐすり」は軟膏剤です。軟膏剤には疎水性と親水性の2タイプがあり疎水タイプはワセリンや流動パラフィンなどが用いられ油脂性とも呼ばれています。特徴としては皮膚保護作用、かさぶた軟化作用があり皮膚への刺激性も低く、患部への薬剤の浸透性に優れています。通常、防腐剤は含みません。べとつきがあり使用感はあまりよくありませんが、ワセリンは病変部への刺激が少なく、湿潤面から潰瘍面、乾燥病変部まで広い範囲で使われています。また、べとつき感があって衣服などを汚すこともあり、特に活発に行動する小児は嫌がる傾向があるようです。親水タイプはクリームとも呼ばれていますのでクリーム剤として説明します。

クリーム剤(記号はクリームのC)?
乾いているカサカサ部分に使われ「薬を塗っている」ことが判りにくく美容的に優れ、顔などの部位には適しています。
クリーム剤は下記の3種類に分けられますがステロイド外用薬など主なクリーム剤は殆ど乳剤タイプです。

1)乳剤性基剤
乳剤性基剤は水分と油脂を界面活性剤により乳化させたもので、主剤を皮膚に浸透させる作用が良好でべとつきがなく使用感に優れていますが、パラペンなどの防腐剤を含有します。そのため接触性皮膚炎が起こる可能性が稀にあります。乳剤タイプはさらに2つに細分します。

  • 一つは水中油型基剤といって水の中に油が分散した状態(oil in water=O/W)のものでバニシングクリームと呼ばれています。皮膚に塗布して、しばらくすると塗布面が目立たなくなるので喜ばれますが、やや刺激があり湿潤, ビラン面への使用は要注意です。
  • もう一方は逆のタイプで油の中に水が分散しているもので(water in oil =W/O)油中水型基剤、コールドクリームと呼ばれています。滑らかな塗布感で皮膚への刺激がバニシングに比べて一般的に低いとされています。

2)水溶性基剤
水溶性基剤はポリエチレングリコールを主成分とし吸水性があり浸出液を吸収し、湿潤病変部位を乾燥させる作用を有しています。

3)懸濁性基剤
ゲル状のもので、皮膚への浸透性が低いため、アルコールなどで浸透性を高めており刺激性がある。                          
懸濁性基剤については、ステロイド外用薬は少ないので省略します。

液剤(ソリューション剤とも云います)
液体状の外用剤で水やアルコールなどを基剤としています。大きく分けて下記の3種類に分類できます。いずれも防腐剤が添加されます。

1)乳剤性ローション剤
乳剤タイプは乳化剤の作用でお互いに混合しない2種類以上の液体が一つの液体中に微粒子状態で含まれているもので皮膚への浸透性が優れています。主にステロイドや尿素の基剤として使われています。

2)懸濁性ローション剤
懸濁タイプは粉末薬を液体中に入れた合剤で使用前によく振ることが必要、塗布したあとに薄い皮膜をつくります。

3)溶液性ローション剤
溶液タイプはアルコールを基剤とし、薬剤の浸透と独特の爽快感をつくります。
いずれも頭部の毛髪のなかに湿疹が出たときなどに使います。

スプレー剤
ローション剤の発展型で手軽に使え、拡散して患部に浸透させることができます。便利ですがその分、割高となっています。ほとんどが液化天然ガスの力で噴霧しますので火のあるところでは使えません。

粉末剤
代表的なものとして亜鉛華があり、病変部に散布することで水分を吸収し、乾燥させる作用があります。

貼剤・テープ剤
万金膏など昔は膏薬と称され外用剤はほとんどこのタイプでした。今はサロンパス等の湿布剤が代表的ですがステロイド貼剤も開発されています。病変して皮膚が厚くなったり、ひび割れができてしまった部分に使われます。
効力が大きく持続性に優れていますが、患部を覆ってしまうので蒸れたり、毛穴や汗腺を塞ぐことになって稀に毛包炎を起こすこともあるようです。

Adobe Reader

PDFファイルをご覧になるには、ご使用のパソコンに閲覧ソフトウェアのAdobe Reader(無料)がインストールされている必要があります。上のボタンを押してソフトウエアをダウンロードし、インストールしてください。