日本アトピー協会は、アトピー性皮膚炎およびアレルギー諸疾患に対して、安心と安全、そして快適と向上を目指す人々の暖かい誠意に基づき組織された団体です。

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アトピーの治療

治療環境の変還

一部の方のマスコミ操作によって「ステロイド毒薬説」が広がり、これに対して日本皮膚科学会が有効な反論をせず「無視」した結果、多くの患者さんはせっかくの良薬を拒否するという不幸な時代が過去にありました。いまでは誤解が解け、ステロイド外用薬は標準治療として定着していますが、血液製剤など過去の幾つかの薬害に関係者が誠意を持って対応しなかったがため、未だに製薬行政への不信感があることは否定できません。

アトピーがなぜ難病に仕立てられたのか?

◆アトピー性皮膚炎を巡っての治療環境の変遷
通常の「病気」がなぜ特異な「難病」として広まったのか、その辺のところを諸資料をもとに時系列に構築してみました。また薬害の歴史を交えたメモも挿入しました。アトピーも含めて医療の世界では情報公開がまだまだ遅れていて、カルテ開示はなかなかはかどりません。さらに医学用語の難解さは、まさに封建時代の「寄らしむべし、知らしむべからず」そのままであり、またカルテ開示が遅れている理由のひとつにあまりにも画数の多い漢字が使われていて、これを略して書くことで判読不可能な文字が多いから…と言えばうがち過ぎでしょうか。もっとも最近は英語の略称が多くアトピー性皮膚炎はADと表記されています。そんな中でアトピー医療を医師自身が検証する動きは誠に喜ばしく頼もしい限りです。

ステージ1 1960年代/アトピー黎明期

アトピー性皮膚炎という概念が専門医以外ではまだ確立されておらず、湿疹はジンマシンやヨダレかぶれといったことで処理されていました。新聞紙上にアトピー性皮膚炎というコトバが登場するのは昭和37年1月30日の朝日新聞です。

60年代初頭、サリドマイド禍。レンツ警告後9ヶ月も経た62年9月、ようやく大日本製薬がイソミン、プロバンMを回収。日本でのフォコメリア(あざらし肢症)発生数978件

ステージ2 1970年代/ステロイド外用薬の濫用期

5段階のステロイド外用薬の開発

  • ステロイド外用薬が皮膚科領域で特効薬的にもてはやされ皮膚科医は自信満々
  • 皮膚炎症制御に対する過信潜行するステロイド外用薬の副作用
  • 皮膚科医師以外による濫用
  • ストロングクラスのステロイド外用薬が薬局薬店で買えるわが国だけの特殊性
  • 患者自身のステロイド外用薬に対する意識の低さ病気の要因に対する研究不足
  • アトピー性皮膚炎を死に至る病ではないと軽視する傾向にあった

この頃、スモン(悪性急性脳脊髄視神経炎)がキノホルムによるものと厚生省が発表、薬害の恐怖が一般に浸透した

ステージ3 1980年代前半/皮膚科医苦悩の時代

アトピー性皮膚炎を軽視する母親たち

  • 軽く考えて軟膏塗布を慎重に行なわなかった(コンプライアンス不履行)ステロイド外用薬の副作用についての皮膚科医の報告と反省
  • ステロイド外用薬開発の転機…安全性の重視するようになった初のステロイド訴訟
  • ストロングクラスの外用薬による酒サ様皮膚炎発症で医師を告訴

効かない薬、老人性痴呆症治療薬「ホパテ」から田辺製薬撤退

ステージ4 1980年代後半/厳格食事療法の時代

隆盛を極める厳格食事制限

  • IgE、RAST検査の普及と徹底化
  • 皮膚科医のアレルギー論に対するスタンスの不明確さ

皮膚科医の自信喪失

  • より消極的なステロイド外用療法へ方向転換
  • 論文重視、臨床軽視の卒業後教育

エイズウイルスの発見後も非加熱血液製剤をミドリ十字は売りつづける

ステージ5 1990年代前半その1/ステロイドバッシングの時代

マスコミにより難病扱いされるアトピー性皮膚炎

  • アトピーの事を書けばニュースとなる時代

テレビによるステロイド叩き

  • ニュースステーションの特集で、久米宏キャスターが「ステロイド外用剤は最後の最後、ギリギリになるまで使ってはいけない薬」と発言。

ステロイド訴訟記録の出版とその患者さんによる電話相談の隆盛

  • いのちの電話と言うキャッチフレーズが患者さんの心をつかむ患者団体の乱立と集団訴訟への動き
  • 拡大する医療不信
  • 連合のできない患者団体の群雄割拠
  • 要領よくプライベートブランドで儲ける「市民の会」

抗生物質の効かない耐性菌MRSA(メチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌)の出現。ケフレックス、ケフラールが儲けクスリとなる

ステージ6 1990年代前半その2/マスコミ名医登場の時代

日本小児科学会における厳格食事制限療法の反省

  • 低身長児発生の懸念を認める
  • 心理的重圧によるトラウマ発生の問題提起

オピニオンリーダーを欠いた日本皮膚科学会

  • メディアのスター、京都のアレルギー科医師の登場
  • 皮膚科医以外の執筆によるアトピー図書の氾濫
  • 珍奇療法に飛び付くマスコミの対応

皮膚科医より提唱された脱ステロイド療法

  • 論文のみで充分なる臨床検討が成されないままに拡大する

密かに立ち上がるアトピービジネス御三家

  • O社の完璧なマーケティング政策
  • C社の巧みなルーモア(伝聞)作戦の展開
  • T病院N医師のカリスマ性の確立

ヤクルト社の抗ガン剤塩酸イリノテカンで臨床実験患者20人死亡、しかも発売後にも11人が死亡。副作用死とガン死の境界のアイマイ性が問題となる

ステージ7 1990年代中頃/脱ステロイド美化の時代

雑誌等で脱ステロイド療法を美化

  • 七転八倒の末に離脱した英雄的行為への賞賛

日本皮膚科学会でのステロイド論争

  • 変化を見せるステロイド薬害論
  • リバウンド現象という概念が一人歩きし始め一般に広まる

拡大する医療不信

  • インターネットによるステロイド肯定派医師に対する松某氏。赤某氏の下品なバッシング
  • アトピービジネス側のステロイド毒薬説の流布
  • 「皮膚科は黙ってステロイド、ポン!」への患者さんの反発
  • 患者サイドの民間療法への依存傾向
  • 怪しげ漢方の隆盛と松某女史主催の高価な中国漢方ツアー

非加熱汚染血液製剤を容認した安部元帝京大教授に見られる患者無視の姿勢、そして厚生省と製薬会社への不信感増大

ステージ8 1990年代後半/皮膚科医自信喪失の時代

疑問の迷路に迷い込んだ皮膚科医

  • 小児科医を含めて百家騒鳴の方法論の展開
  • 軽症例までが不適切治療で重症化となった

アトピービジネスの隆盛

  • O社、C社、N病院の御三家に続くKY社等フォロワー企業の目白押し
  • アトピーは儲かるの合言葉で健食業界は百花繚乱の大躍進
  • 増加する悪徳商法の被害

不適切保険外療法の増大

  • 医療施設以外での非合法治療の横行
  • 許認可不要、野放し状態のエステによる被害拡大

マイルドと思われていた抗アレルギー薬テルフェナジンによる死亡事故発生

ステージ9 2000年/皮膚科医挑戦の時代

治療ガイドラインの作成

  • 厚生省によるプライマリケア用としての作成
  • 日本皮膚科学会による難治を対象に含めた作成

アトピービジネス駆逐開始

  • 日本皮膚科学会内に被害相談FAX設置
  • 弁護士有志による110番相談窓口を設置
  • 被害者救済の支援態勢づくり

ステロイド外用薬肯定の兆し

  • 過激な反ステロイドキャンペーンへの患者サイドの嫌悪感
  • アトピービジネス側からの反ステロイド活動団体への資金供与
  • 患者自身の学習によりステロイド外用剤の功罪を納得

如何でしょうか。納得いただける個所、そうでない個所、いろいろとありますが、ここは決定的に間違っているという個所があればお知らせください。手直しをしながらアトピーを取り巻く環境を整理し、何が問題なのか、如何すれば問題解決できるのか、共に考えて行きましょう。

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