アトピーづきあい10カ条
アトピーは長期的な取り組みが必要です。その心構えを箇条書きにしました。また自ら命を絶つ以外に死に至るケースが稀な病気ですので、患者さんや、とくに家族の方を対象とした「アトピービジネス」が横行しています。無益な商品を囲い込みによって法外な価格で購入を強要することと定義づけしていますが、その被害にあわないよう、くれぐれも気をつけてください。
アトピー性皮膚炎は慢性疾患ですので感染症のように注射一本ですぐに治るわけでなく治療期間が長引き、ともすれば途中で治療放棄したくなります。
一般に「病気」といわれている中には、赤痢やコレラ、結核のような原因が突き止められ治療法が確立している「感染性の病気」と、ガンをはじめ糖尿や高血圧症、心臓疾患や腎疾患など歳を重ねるとともに体の機能が変質する「変質性の病気」があり、アトピー性皮膚炎などアレルギー諸疾患も免疫機能が変質したものと考えられています。「感染性の病気」は結核などを除き、治療期間は短期間です。
いっぽう「変質性の病気」は何年、何十年と長い治療期間が必要で、一生、治療を続けなければ生きてゆけない病気もたくさんあります。アトピー性皮膚炎は「変質性の病気」ですが多くの場合命にかかわらないので途中で治療を放棄したくなります。これが病気をこじらすもっとも大きな原因です。気長に治療を受け続けることが何よりも求められます。即効性は絶対に期待しないでください。以下の10カ条を参考にしてください。
アトピーづきあい10カ条
第一条
アトピー素質は遺伝的なものが関与することが多い疾病です。
また、著しい乾燥肌、敏感肌であることを前提に取り組んでください。
第二条
肌が著しい乾燥傾向ですので入浴は毎日欠かさず、またつねに保湿を心がけてください。
第三条
からだを拭うときはこすらずに軽くたたくようにして、水分を吸い取るようにしてください。
第四条
できるだけ規則正しい生活を送るよう心がけてください。日付が変わる前に就寝、従って夕食は9時までに。
第五条
掻く回数を減らすのは難しいですが、出来れば掻く回数を記録し減らす工夫をしてください。
第六条
保湿とはいっても汗は悪化要素ですので汗で湿った肌着は取替え、つねに肌を清潔に保ってください。
第七条
肉食傾向なら魚や大豆タンパクの摂取を心がけるようにしてください。
第八条
医師との信頼関係を築き息の長いお付き合いをしてください。
第九条
ステロイド外用薬を使いこなすよう怖がらずに取り組んでください。
第十条
アトピーは焦らず、諦めず、侮らず、在るがままに、そして怪しいものには近づかずの5つのアをモットーに。
アトピービジネスを見破る10カ条
命にかかわることが少ないだけにアトピーの方を対象とした悪質な「アトピービジネス」があとを絶ちません。協会ではアトピービジネスを次のように定義づけております。
「アトピー性皮膚炎が治るというコトバのもとに、無益な商品あるいは医学会で認められていない治療法を、囲い込みや義理人情で縛り付けて、購入あるいは受診を強要するもの」
10カ条を参考にして「引っかからない」ように身を守ってください。
第一条
説明会場が豪華なホテルだったり、店舗が必要以上に華美でオシャレ過ぎる場合、また参加者の割りに「係員」が多すぎる場合は一刻も早くその場を立ち去ってください。
第二条
医療機関や製薬会社でなく一般の企業が「アトピー○○治療研究会」といった名称を使っている場合は先ず疑ってかかって間違いありません。
第三条
「好転反応」「体内の毒素を出す」「体質を変えなければ…」というようなコトバを多用するときはとても怪しげです。
第四条
患者団体が新聞雑誌に広告を出す必要はまったくありません。患者団体に似せた業者がたくさんありますご注意ください。
第五条
「あなただけにそっと教えます、誰にも言わないで…」というコトバは他者との情報の交換を遮断し、あなたを孤立させる業者の手口です。またとても親切に「カウンセラーと称する女性」が対応するのは「モノを売り付け」れば手数料がもらえるから。電話口で「もらい泣き」する演技も欲と二人連れだから。
第六条
特定療法や特定の商品を「名誉教授」という定年退官された医師が賛美する図書は業者の「広告宣伝物」の延長と考えてください。図書はパンフレットを作るより安い価格で出版できます。また「私はこうしてアトピーを治した」という体験談は医学的な裏づけがない作文と考えてください。
第七条
医師の推薦もいい加減なものがあり、名誉医学博士や予防医学博士という実在しない名称や、調べようのない外国の地方大学の肩書きを使うなどはとても怪しげです。さらに「医学会で発表」といっても「評価」されたわけではありません。学会定期大会は一定の条件を充たしている論文を「発表する場」であって「評価する場」ではありません。
第八条
特定医師や業者の悪口や批判にもっともらしく相槌を打ったりしながら「でも私たちは違いますよ」と自己を擁護する場合も疑ってかかってください。また医師は学会以外で他人の療法を問題にすることはありません。まして患者さんの前での中傷誹謗は分別ある医師はしてはいけない事。他の医師の療法に関して患者さんからの質問に困惑しながら片頬を緩めて「冷笑」するのが抵抗のしるし。
第九条
インターネット上の表現を額面どおりに受け取ってはいけません。ホームページで商品を売っていても「会社」が実在しないこともあり、トラブルがあった場合は責任の所在があいまいです。まして「個人輸入の医薬品」を求めるなど危険極まりない行為です。「皮炎霜」のような未承認医薬品の被害はいまだにあとを絶たず、かえって巧妙化しています。ご用心ください。
第十条
民間療法や健康食品、サプリメントなどは「予防医学」の分野で効果が期待できます。健康状態を不健康にしないためのもので「病気を治す」ものではありません。「病気を治す」のは保険診療に代表される「治療医学」の分野です。「予防医学」と「治療医学」の明確は違いを認識し、悪徳業者の口車に乗らないでください。