日本アトピー協会は、アトピー性皮膚炎およびアレルギー諸疾患に対して、安心と安全、そして快適と向上を目指す人々の暖かい誠意に基づき組織された団体です。

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アトピーの治療

摂取要因・吸引要因

摂取要因=摂取アレルゲン

食べ物からの影響はとても大きく、とくに乳幼児に発症するアトピー性皮膚は腸管未発達によるさまざまな食物の消化不良が原因とされています。しかしながら加齢とともに食物自体の影響は少なくなってきますが、今度は食品添加物や残留農薬の影響が大きく出てきます。従来の三大栄養素を軸とした栄養学では対応しきれないこともあり、タンパク質の分子量の大きさや、脂肪や油の種類、微量ミネラルの働きなど、多くの事柄を学んでおく必要が生じてきました。しっかりとした「食育」の考え方を持つことがとても重要となっています。

主なミネラル

■カルシウム  
ほとんどの食品に含有、とくに乳製品、魚介類
欠乏症 骨格の発達異常、骨粗しょう症
過剰摂取 高カルシウム血症、腎不全、胃腸アトニー、惰眠
■カリウム  
ほとんどの食品に含有、とくに乳製品、ドライフルーツ
欠乏症 低カリウム血症 心臓障害 運動麻痺
過剰摂取 高カリウム血症
■リン  
乳製品、肉類とくに鶏肉、ナッツ類
欠乏症 血球異常 消化器の機能不全
過剰摂取 高リン酸血症による腎不全
■マグネシウム  
ほとんどの食品に含有
欠乏症 神経筋の過敏反応
過剰摂取 低血圧、呼吸不全、心臓障害
■鉄   
ほとんどの食品に含有、とくにレバーなどの獣内蔵肉、大豆など。
なお食品には85%がヘム鉄として含有
欠乏症 貧血、学習や作業能力の低下、さじ状爪
過剰摂取 皮膚色素沈着、糖尿病への悪影響
■ヨウ素  
ほとんどの魚介類、海藻、卵、乳製品
欠乏症 甲状腺腫, 胎児の成長不良、なお放射線障害に著効ありという
過剰摂取 甲状腺の機能亢進、粘液水腫
■亜鉛  
魚介類とくにカキ、獣内蔵肉、卵
欠乏症 皮膚障害、味覚減退、性腺機能低下、なおお肌の美容に良いという
過剰摂取 神経障害
■クロム  
ほとんどの食品に微量含有、とくに乾燥酵母
欠乏症 糖尿病患者の糖機能障害
過剰摂取 皮膚炎症
■セレン  
ほとんどの食品に微量含有
欠乏症 血球異常 消化器の機能不全。なおセレンの欠乏症は非常に少ない
過剰摂取 高リン酸血症による腎不全
■銅  
ほとんどの食品に微量含有
欠乏症 貧血、ちぢれ毛
過剰摂取 胆汁性肝硬変
■フッ素  
欠乏症 骨粗しょう症、虫歯
過剰摂取 骨格変成、歯のエナメル層脆弱
■モリブデン  
マメ科、全粒穀物、獣内蔵肉
欠乏症 頻脈、感覚麻痺
過剰摂取 不明

微量ミネラルは偏食をしない限り通常の食事で充分に補われます。ミネラルを気にするあまりサプリメントなどで偏った補い方をするとかえってバランスが崩れてマイナス要因となることがあります。特にアトピーやアレルギーを持っている方は気をつけてください。ミネラルに関してはまだまだ判らないことが多く今後の研究に待たれます。摂取バランスが崩れると肌にトラブルが起きるという説もありサプリメントへの過剰な期待はもたないほうがいいようです。いずれにしましても医師に相談してください。

吸引要因=吸引アレルゲン

カビの胞子、ダニの屍骸などはもっとも危険度の高い吸引アレルゲンです。別に項目をつくって掲載していますのでご参照ください。

動物の分泌物 動物の毛などに反応が出るのは毛自体のこともありますが、たいていは毛づくろいしたときに毛に付着する唾液成分でネコはイヌの100倍も強力に反応すると云われています。羊の毛に含まれるラノリンに反応が出ることもあり、この場合は「ムートン」は避けましょう。ウマのアレルギーは少ないようです。
アレルギーを持っている方はペットの飼育は避けたほうが賢明です、鳥ではハトは病原菌が、またインコやオウムはダニが心配です。どうしてもペットを飼いたいというなら熱帯魚がやや無難でしょうか。
なお見過ごされるのが昆虫で、とくに「が」は成虫も幼虫も要注意です。
花粉 花粉自体に罪はないようです。花粉も特有の高分子で構成されていますのでクサリの長さ(分子量の大きさ)でアレルゲンになっているとも考えられますが、どうやら花粉と化学物質が結合した複合物が悪さをしているという見解のようです。花粉は窓より屋内にはいりこんでくるほか、衣服などに付着して入り込んでくることも無視できません。玄関口でのブラッシングの習慣をつけてください。
また空気清浄機を活用し、室内環境を清潔に整えましょう。ただしマイナスイオン効果に関しては測定方法が未確立で本当のところは判りません。「ムード」と「ブーム」の効果でイリュージョン(幻影)が作られているようです。
揮発性有機化合物
(VOC)
シックハウス症候群を引き起こすだけでなくアトピー性皮膚炎にも大きく影響します。家具売場の前を通っただけでホルムアルデヒドに反応し顔が真っ赤になった患者さんも多くおられます。また住居内の構造物で塩ビ系または酢酸ビニル系の接着剤を使っている場合、大きな影響をうけます。アレルギーの方が避けるべき主な揮発性有機化合物(VOC)を以下に列挙します。(厚生労働省室内空気質基準より)

主な揮発性有機化合物(VOC)

■ホルムアルデヒド 指針値0.06ppm
アルデヒドケトン化合物  分子量30.03
家具全般、カーペット、合板、壁紙、シャンプー、香料
■トルエン 許容量0.07ppm
芳香族化合物       分子量92
塗料面、塗料材料、多目的接着剤、カーワックス、ガソリン
■キシレン 指針値0.20ppm
芳香族化合物 分子量106
ペイント油性塗料、ラッカー油性塗料、油性ニス、木材防腐剤
多目的接着剤、ワックス
■パラジクロロベンゼン 指針値0.04ppm
含ハロゲン化合物 分子量147
多目的接着剤、塗料
■エチルベンゼン 指針値0.88ppm
芳香族化合物 分子量106
ラッカー油性塗料、ラッカー薄液
■スチレン 指針値0.05ppm
芳香族化合物 分子量104.1
断熱材、建材
■クロルピリホス 指針値0.8ppb
有機リン化合物
防蟻剤、農薬
■ジブチルフタレート 指針値0.02ppm
多目的接着剤、塗料
クロルピリホスの指針値の単位ppbはppmの千分の1を示します。

ホルムアルデヒドの感じ方基準

空気汚染物質の中でアレルギーの方々にいちばん影響の大きいのがホルムアルデヒドです。
HCHOという単純な化学式で比重1.067で空気よりやや重い可燃性の気体です。
病院でよく使われるホルマリンやフェノール樹脂の原料となり室内空気汚染物質とはいうものの年間百万トン以上が生産されています。
この物質は合板や建材、接着剤など住まいを構成するあらゆる部門で使われています。ホルモアルデヒドは触れない、吸わない、そして遠ざけるために感覚的な基準で0.06ppmがどの程度の値なのかを知ってください。
なお食品の中で干しシイタケに多く含まれていますが、これは調理すると消滅します。

過敏な人は臭いを感じる 0.05ppm
一般の似とでも臭いを感じる 0.08ppm
目への刺激を感じる 0.40ppm
のどがいがらっぽくなる 0.50ppm
鼻がつまるような刺激 2.60ppm
涙が出てくる 4.60ppm
強度の鼻水・涙 15.00ppm
咳き込む 20.00ppm
炎症がはじまり肺炎をおこす 31.00ppm
死にいたる量 104.00ppm

厚生労働省指針値の0.06ppmは敏感な人ではすでに臭いを感じています。この値が妥当かどうかの判断は専門家に委ねますが、諸外国でいちばん厳しい「規制値」はノルウエーの0.05ppmで緩やかなのはスペインとアメリカの0.40ppmです。規制値ですのでこれを超えると何らかの法的処置を受けるということで、日本の0.06ppmはノルウエーに次ぐとはいえ指針値(指導数値)で規制ではなく罰則も法的処置もうけないもの、その辺の違いがあることも知っておいてください。

PM2.5
吸引要因で盲点は黄砂、春先に中国大陸からはるばる飛来する微細な砂塵です。西日本では春の「風物詩」ですが最近は東京でも黄色いベールを冠ったように視界が遮られニュースになっています。
ミクロン単位ですがもともとは無機質な粒子ですがこれも窒素酸化物などと結合しアレルゲンになっています。黄砂が飛来すると喘息が出てくる方もいて、風物詩なんて呑気なことを云っておれなくなりました。
マスク着用が有効です。また黄砂や花粉を室内に入れないハイメッシュ網戸も市販されていて有効です。

赤ちゃんになって床上10センチに注意を向ける
乳幼児アトピーの場合はお母さんの目線でなく赤ちゃんの目線で物事を考えてください。
畳、じゅうたん、ワックスがけ、お布団。
赤ちゃんの場合はすべてが床上10センチですので影響力は大きくベッドなどで高さを調節し、また床の素材、お掃除の程度、ワックスの種類などに気を使ってください。
なおベビーカーで外出の場合は地上50センチを考慮してください。砂埃や日光の照り返しなどは想像以上にきついと云われています。

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